PDFを画像にするとき、解像度をいくつにすればいいか

2026-09-29

「このPDF、何DPIで書き出せばいいですか」という質問には、実は前提の間違いがある。PDFそのものは解像度を持たない。 解像度が決まるのは、PDFを画像にする、そのタイミングだ。

PDFに「解像度」が無い理由

PDFのページは、写真のような画素の並びではなく、「この位置にこの文字を置く」「ここからここへ線を引く」という命令の集まりでできている(ベクタ形式)。拡大しても文字がにじまないのはこのためだ。

画像にする(ラスタライズする)とき、初めて1インチをいくつの画素で表すかというDPI(Dots Per Inch)を決める必要が出てくる。同じPDFページでも、指定するDPI次第で、出てくるPNGの画素数はいくらでも変わる。

DPIを上げると、面積は必ず4倍になる

DPIを2倍にすると、縦と横それぞれの画素数が2倍になる。面積(総画素数)で見ると、2×2で必ず4倍になる。 ここは幾何の話なので、中身が何であっても変わらない。

pdf-libで自作したA4・1ページのPDFを、実際にこのサイトのツールで72・150・300・600DPIに書き出して画素数を確認した。

DPI画素数(幅×高さ)面積の倍率(前段比)
72596 × 842—
1501,241 × 1,754約4.3倍
3002,481 × 3,5084.0倍
6004,961 × 7,0164.0倍

150→300、300→600はDPIがきっちり2倍なので、面積もきっちり4倍になっている。

ファイルサイズは、面積ほど素直に増えなかった

「面積が4倍になるから、ファイルサイズも4倍になる」と思うかもしれないが、同じPDFで実測すると、そうはならなかった。

段落を敷き詰めた文字主体の1ページを、同じ4段階のDPIでPNGに書き出してファイルサイズを測った。

DPIファイルサイズ面積の倍率サイズの倍率
72142.9 KB——
150485.1 KB約4.3倍約3.4倍
3001,233.6 KB4.0倍約2.5倍
6003,088.3 KB4.0倍約2.5倍

面積が4倍になった区間(150→300、300→600)で、ファイルサイズは2.5倍ほどしか増えていない。

理由はPNGの圧縮の仕方にある

原因は、書き出し形式であるPNGの圧縮方式にある。

PNGは同じ色の並びが続くほど効率よく圧縮できる。文字主体のページは、DPIをどれだけ上げても大部分が「余白(白一色)」のままで、そこはDPIが上がってもほとんど圧縮コストが増えない。増えるのは文字の輪郭線の部分だけで、輪郭の複雑さは面積ほど激しくは増えない。結果として、ファイルサイズの伸びは面積の伸びより緩やかになる。

写真が多いページでは、話が変わる

同じ検証を、なめらかなグラデーションを敷いた「写真に近い」1ページでもやってみた。72DPI・596×842pxでの結果を、文字主体のページと並べるとこうなる。

ページの中身72DPIでのファイルサイズ
文字主体142.9 KB
写真に近い画像437.9 KB

同じ画素数・同じDPIでも、写真に近いページは文字主体のページの3倍以上重い。写真のような画像は、ほぼ全ての画素が隣と少しずつ違う値を持つため、PNGが得意とする「同じ色の並びをまとめる」圧縮が効きにくい(別記事「JPEG・PNG・WebPをどう使い分けるか」で実測した、写真にPNGを使うとファイルが膨らむ現象と同じ理由だ)。

この性質上、写真に近いページでDPIを上げていくと、余白で圧縮が効く文字主体のページとは違い、画素数の増え方(4倍)に近い形でファイルサイズも増えやすい。増える画素のほとんどが「新しい、圧縮しにくい情報」になるからだ。

文字主体のPDFはDPIを上げてもサイズの伸びが穏やかだが、写真が多いPDFではDPIを上げた分だけ、ほぼそのまま重くなると考えたほうがいい。

用途に対してDPIを上げすぎない

画素数が増えれば増えるほど画質は上がるが、上の実測のとおり、文字主体でも600DPIの1ページで3MBを超える。上げるほど得をするわけではない。

判断の軸は「その画像を最終的にどこで見るか」だ。

  • 画面で見るだけなら、画面の表示解像度以上に上げても見た目は変わらない。

表示できる画素数を超えた分は、縮小されて捨てられるのと同じになる

  • 紙に印刷するなら、画面より高いDPIが必要になる。 紙は画面より近くで細部を見られるため、

同じ「きれいに見える」水準に必要な画素密度が画面より高くなる

  • DPIを上げるほどファイルサイズは増える。 特に写真が多いページでは

ほぼ画素数どおりに重くなるため、必要以上に上げるとファイルが無駄に大きくなる

元の画像より高くしても、情報は増えない

PDFの中に、すでに低い解像度の画像(写真やスキャン画像)が埋め込まれている場合、書き出すDPIをどれだけ上げても、埋め込まれている画像が持っている以上の情報は出てこない。

画素を増やす処理(補間)は、既にある画素の間を周りの色から推測して埋めるだけで、新しい実際の情報は作られない。埋め込み画像の解像度を超えてDPIを上げると、ファイルサイズだけが増えて、見た目の精細さはほとんど変わらない。

PNGとJPEG、どちらが向くか

このツールはPNGでの書き出しだけに対応しているが、判断の考え方として触れておく。

「JPEG・PNG・WebPをどう使い分けるか」の記事で実測したとおり、平坦な色面と線でできた画像はPNGと相性がよく、写真のような連続階調の画像はJPEG(やWebP)と相性がいい。 理由は同じで、PNGは「同じ色をまとめる」方式、JPEGは「細かい変化を捨てる」方式だからだ。

文字主体のPDFページはPNGに向いている。今回の実測でファイルサイズの伸びが穏やかだったのも、この相性のよさが理由の一つだ。逆に、写真が多いページをPNGで書き出すと、JPEGで書き出すよりファイルが大きくなりやすい。

まとめ

  • PDFに解像度は無い。 画像にする時点で、DPIとして初めて決まる
  • DPIを2倍にすると、画素数(面積)は必ず4倍になる。 ここは中身に関係ない、幾何の話
  • ファイルサイズの増え方は中身次第。 実測では、文字主体のページは面積ほど増えなかった

(4倍の面積に対し約2.5倍)。理由はPNGが余白をまとめて圧縮できるため

  • 写真に近いページは、DPIを上げた分だけファイルサイズも増えやすい。 圧縮がまとめにくいため
  • 用途に対して必要以上にDPIを上げない。 画面用なら画面の解像度まで、

埋め込み画像より高くしても精細さは増えない

計測の条件

このサイトの「PDFを画像にする」ツールを実際に使い、pdf-libで自作したA4・1ページのPDF(文字主体:10ptの英文を隙間なく敷き詰めたもの/写真に近い画像:なめらかなグラデーションに弱いノイズを乗せた900×600のPNGを埋め込んだもの)を、72・150・300・600DPIで書き出してファイルサイズを測った。写真に近いページは72DPIのみ計測できた(それ以上のDPIでは書き出しに時間がかかりすぎたため、今回は計測を見送った)。

この記事に対応するツール